行間のよみ 2015年 194x259cm

 

行と行の間には 音にならない意味がある 目には見えない音がある
アルノ川によって切り裂かれた フィレンツェの街は
ポンテ・ベッキオによって繋ぎ合わされ 朝の光が行間を読み込み
透明な冷気の中 橋の上の店よりひと足先に 藍色の帳が明けていく
夜から朝へ 街がひとつになる除幕式
自然に成り済まし 視点を動かす 余分なものは削ぎ取って 僅かな揺らぎを掴まえる
耳には届かない低集音が 肌の中に沁みわたる 
細心の注意を払い 限界のないローラーを引く 行ったり来たり
繰り返しのように見える行為を 径を詰めて高さに変える

空間を時間が分ち難く通り過ぎる時 行間の扉が開き
空間と時間の間に小さな塵が 螺旋状に舞い上がる 百分の一の微振動を頭の中に描き
過去と未来の行間を読み解いていく 生きている

点と点を繋ぎ合わせ 直線から成り立ち変わり続ける情景の
場面と場面を直線で繋ぎ合わせ 美の中に落とし込む 最後の一滴は 
美の綻びを見逃す 負の試みを恐れず

宮廻正明

© miyasakomasaaki.com 宮廻正明

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